抄録
台湾では,日本と同じ平面構成を持つ官舎系住宅が多数建設された。これらは戦後取り壊されたものも多いが,台湾の人々の住居として活用され現在に至っているものも多い。本報告は,この日本式住居の増改築による空間の変容と,台湾の人々の住まい方の分析を通じ,日本と台湾の住様式の相違性を比較住居論的視点から考察したものである。主要な知見を以下に示す。①イス座の起居様式では,居室の機能は単一的で,タタミの転用性を前提とした3・4室の小規模住居では,住生活に必要な基本的居室が確保できず,増改築による室数の増加が大半の世帯で行なわれている。②客庁はアプローチに対する前面配置と一定の規模が確保されていることが原則で,こうした条件を満足しない住戸タイプでは客庁の位置は安定せず,規模確保が優先され,また改修や建具の取り外しにより客庁の規模を拡張する傾向がみられる。③主臥室では,ベッドや居間的家具が設置されるため一定の規模とプライバシー確保が必要とされる。従って既存部にこの条件を満足する居室がとれない場合には増築による解決がなされ,既存部にとられる場合にも間仕切りの改変等によりプライバシー確保が図られる。④外部空間の現状の使われ方は,台湾における前庭を中心とした構成が継承され,特に北入りの住戸では本来主庭となるべき後庭が裏庭的に使われるものが大半で,外部空間に対する考え方の相違性が明瞭に表れる。⑤住戸内の居室のとられ方では,相違性とともにバリエーションがみられる。客庁は前面配置と規模確保要求が強く,この条件を満足する平面構成の場合には客庁の位置は比較的安定するが,客庁の奥に臥室をとると便所等への居室の通り抜けが発生しやすく,これを防ぐため客庁が住居中央部にとられる場合が多い。一方で,大幅な改造やアプローチの付け替えにより客庁を前面配置させる事例も存在し,伝統性の根強さを示している。