住宅建築研究所報
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超高層住宅の長周期振動に対する振動感覚の調査研究(1)
神田 順田村 幸雄佐野 行雄藤井 邦雄崔 恒田村 哲郎大築 民夫
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1988 年 14 巻 p. 381-391

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抄録

 本年度の研究報告は,①本研究の目的・および意義,②関連分野における既往の研究の調査結果,③実際の高層住宅における振動感覚調査,④本研究の特徴を示す振動知覚閾試験のための振動シミュレータの開発結果,⑤その装置による基礎的な振動知覚閾の試験結果,⑥今後の課題,等の基本的な成果のまとめからなる。ここ数年,超高層住宅,ホテルなどが開発されるにつれ,揺れを感じる頻度などが住居としてのグレードに深く関係してきている。これらの背景を考慮し,本研究では数秒から1秒程度の長周期振動感覚における知覚閾のばらつきを定量的に把握し,超高層住宅等の耐風設計における使用限界状態に関する客観的な指標設定の提案を行なうこととした。まず,研究着手の第1段階として,高層建物の風による振動の実際,および長周期振動の知覚閾について文献調査を行ない,既往の研究内容を把握した。実測された風による建物の振動は,水平方向の併進振動にねじれ振動が重なって現われる。いずれも一次の固有振動数成分のみが卓越していると考えて良さそうである。長周期振動の知覚閾に関する既往の報告を概観したところ,1Hz前後の振動に対する知覚閾を直接論じたものが少なく,また,個体差に基づくばらつき量の把握が未だ十分にされていないことが明らかとなった。実態調査の一環として23階建の超高層住宅(SRC造,固有振動数1.2Hz)の19階以上の住人にたいして,最大瞬間風速28m/sの強風が吹いた後で揺れについてのアンケート調査を行なったところ,風による振動を感じた経験があると回答した人は19人中1人であった。振動シミュレータについては,加振時の加速度波形が従来になく精度の高い正弦波となるものが開発された。この振動シミュレータを用いて延べ約120人の老若男女の被験者について振動知覚閾の調査を行なった。詳細な分析は今後に委ねるところであるが,知覚閾の試験結果のばらつきについては対数正規分布で表わすことができそうである。

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© 1988 一般財団法人 住総研
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