住宅総合研究財団研究年報
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住宅におけるにおいの定量化を考慮した室内空気環境と温熱環境の総合評価に関する研究(1)
木村 建一田辺 新一岩下 剛
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1991 年 17 巻 p. 291-300

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抄録

 実際の室内空間において嗅覚パネルに空気のにおいを嗅がせ,パネルの申告する知覚空気汚染度と,化学物質濃度との比較を行なった。実測に参加したオキュパント(在室者)は計615名であり,また,パネルは93名であった。パネルの知覚空気汚染度評価には,Yaglouの臭気強度スケール,空気の新鮮さを問うスケール,及び不快者率を求めるための,においを受け入れられるか受け人れられないかを問う設問を使用した。また,主観的評価と同時に温湿度,CO,CO2濃度,浮遊粉塵濃度,PMV値の測定を行なった。その結果,CO,CO2,粉塵濃度が低く,ビル管理法の基準値以下の値であっても知覚空気汚染度がかなり高くなる場合が多くみられた。Fangerの提案したolfという知覚空気汚染源強度の単位を用いて,床材,壁材等から放たれるにおいを定量化したところ26人分の体臭と同程度のにおいがこれらの中に潜んでいることがわかった。また,空気温度がパネルの知覚空気汚染度申告に及ぼす影響を考察するために,快適域において温度をいくつか設定し,その環境のもとで空気汚染源物質を発生させ,温度によって臭気評価がどのように変化するかを検討した。女子37名,男子35名,計72名がパネルとして,また,各2名がオキュパント・スモーカーとして実験に参加した。空気汚染源として,生体発散物質(体臭),タバコ煙を用い,室内空気温度20℃,23℃,26℃の3種類のタイプを設定した。また,知覚空気汚染度の評価には,Yaglouの臭気強度スケール,その空気を受け入れられるかどうかの質問,許容度を申告するスケールを用いた。その結果,生体発散物質を知覚空気汚染源とした実験において,20℃~26℃の範囲では室内空気温度の差が臭気感覚の申告値へ及ぼす有意な影響はないことがわかった。また,タバコ煙を主な知覚空気汚染源とした実験において,空気温度(20℃~26℃)が高いほど臭気強度・不快者率が高くなり,許容度申告値は低くなった。

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© 1991 一般財団法人 住総研
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