抄録
現代の都市空間設計では「アメニティ」が重視される。音環境の生理・心理的評価においては場合によって騒音となったり,情報として不可欠な音となるので,量的な評価尺度にもある程度限界がある。本研究では音源の種類,情報性,環境の質といったことに着目し,その実態を調査した。まず,都市の音環境サーベイとして,東京近郊を対象としたインタビュー調査を行なった。1日を通じての認識音,良いと感じた音,耳を傾けて聞いた音,自宅で聞いた音と職場などで聞いた音,懐かしいと感じる音,春夏秋冬の季節を連想させる音,といった項目について1年間調査を続けた。回答者総数は重複無しで228人である。その結果,いわゆる交通騒音の他に,人間活動に関する音や,意図的に使用される信号のようなものも重要であることが示唆された。特定の場の音環境の具体例として,東京都心部及び近郊にある3駅において音環境の現状調査を行ない,各駅の特徴を明らかにし,駅の音環境設計について総括的に考察した。その結果,駅の業務形態や放送設備の運用法で音環境に違いが生じ,音量に限っても一考の余地があることがわかった。アナウンスやベルなどの音記号の人間工学的,心理的基礎について今後検討する必要性が示峻された。また,各種の音記号の時間的な構造,空間的な構造,意識状態との関わりについて考察した。それらの現状とその設定法について認知科学,心理学,人間工学等の知見を踏まえて体系的に整理した。