住宅総合研究財団研究年報
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近代都市独立住宅の祖型としての江戸時代大名家中の武家住宅の実証的研究
近世から近代への独立住宅の歴史的展開過程
羽深 久夫内田 青蔵
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1996 年 22 巻 p. 247-256

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抄録

 本研究は,わが国の近世から近代への独立住宅の歴史的展開過程を明らかにする一環として,江戸時代の大名家中の武家住宅に関する史料形式の全体像を明らかにし,明治初期の官舎住宅の史料と比較することにより,両者の関連性を明らかにすることを目的とする。大名家中の武家住宅については,国許の城下町の独立往宅に限定して,全国に及ぶ史料調査を行ない,記載内容から7つの史料形式と建家坪数,間取り,内部仕様の特徴を検討した。明治初期の官舎住宅については,新たに定められた独立住宅に対する規制を史料として,表向きと内向きの部尾構成,建家坪数,建家坪数における表向き部分と内向き部分の割合について,大名家中の武家住宅との共通性を検討した。この検討結果を次のようにまとめた。(1)大名家中の武家住宅に関する史料は,城下絵図形式,目録形式,屋敷絵図形式,定法形式,法令形式,日記形式,台帳形式の7形式があり,その成立は法制化されていく過程に対応していた。(2)7形式の史料のうち,目録形式,屋敷絵図形式,定法形式の史料は,実際の管理運用や規制に用いられていたもので,この中の定法形式の史料に対応するものが,明治初期の官舎住宅の規則であった。(3)大名家中の武家住宅は,大名の家格や石高,藩の地域に関わらず,標準的な建家坪数,玄関と座敷を中心とする表向き部分と居間や茶の間と台所を中心とする内向き部分の部屋構成の基本,各部屋ごとの共通した仕様が認められた。明治初期の官舎住宅は,玄関と御用談の間を中心とする表向き部分と居間と台所を中心とする内向き部分の部屋構成の基本が認められた。(4)大名家中の武家住宅と明治初期の官舎住宅においては,表向き部分と内向き部分に部屋構成の原則があり,建家坪数は役職に応じて規制され,上限はともに50坪を超えることはなく,建家坪数における表向き部分の割合は約3割,内向き部分の割合は約7割に規制されていた。

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© 1996 一般財団法人 住総研
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