抄録
本研究では,神戸市長田区野田北部地区のまちづくりにおいて,被災直後の応急復旧期から現在に至る復興プロセスを整理,分析した上で現状の進め方が抱える問題と,まちづくりのプログラムについて考察することを目的とする。復興プロセスにおいては,半数近く世帯の再建の目処がついているが,戸建ての地権者しか再建できないことや,仮設住宅に入居した住民が地区に戻ってこられないことが問題となっている。生活復旧の進み具合を見ると,土地所有で高齢者を含まない世帯ほど進んでおり,逆に借家で高齢者を含む世帯ほど遅れているという傾向が見られた。居住動向については,震災後間もない時期は,選択の余地がない状況であったが,ある程度落ち着いてくると,元の居住地に近いことや,利便性,プライバシー確保を理由として移動している。今後の意向については地区に戻りたいという気持ちは共通であるが,土地区画整理事業の停滞や二重ローンなどの資金繰りの問題が再建を困難にしており,建蔽率・容積率等に対する制度的な解決や共同化の話し合いの仲介など,専門家の働きの必要性が挙げられた。これらの調査結果を元に,各個人が抱える様々な問題の解決を内包した建築の型を作成した。様々な建築の型の組み合わせにより,環境が担保される小街区の単位が構成され,まちの特性に合った街区が形成される。この街区像を含むプログラムと段階的なシナリオを作成し,シミュレーションを行なった。このシナリオでは復興の初期段階から住民が地域に住まいながらまちづくりを進めていくことを前提とし,仮住宅,仮店鋪の整備によって,住民を地域に呼び戻し,同時に共同建替を漸進的に進めることによってまちを再生する方法をとっている。これを実現していくためには,新たに街区等の小さな単位での話し合いの核になる人材が育つことと,小さな単位から空間像,コミュニティ像についての議論を重ねながら,全体としてまとめあげるプロセスが求められる。