住宅は,周辺の環境との応答の上に築かれる。気候風土や地域社会の違いは,その応答の形に影響を与え,多様なコミュニティと 建築の形を生み出してきた。我が国のような温暖地では,古来「夏を旨」とする開放的な空間構成を特徴としてきたが,20世紀の人工環境技術の普及は,次第に室内空間の閉鎖化を促してきた。近年の省エネの要請はさらに閉鎖化の傾向を強めているようにもみえるが,一方で,環境との応答をしながら,省エネを達成し,かつ快適な室内気候を形成しようというパッシブデザインの動きがある。本論では,現在のパッシブデザインの位置付けを試み,温暖地における環境と応答する住宅の意義と可能性を論じる。