2017 年 43 巻 p. 137-148
本研究は,近代住宅における水まわり空間の変容過程を明らかにするため,住宅改良が活発に展開された大正から昭和期にかけて活躍し,平面形式等に都市住宅の典型的傾向を示す建築家・吉田五十八の住宅作品を分析した。具体的には,水まわりの設備が描かれた平面図,展開図,詳細図等を用いて,台所・浴室・便所・女中室について,住宅全体の動線計画における位置づけや室内空間の変遷を検討した。その結果,1940 年頃と1950 年から55 年頃に変化が集中していることが確認された。そこでは,住宅における表と裏の性格と水まわり空間の関係性が段階的に変化していく様子や,新しい材料や技術の導入がそうした変化に与えた影響が捉えられた。