2013 年 44 巻 1+2 号 p. 17-21
胸水貯留のため、1ヶ月前から呼吸の悪化を呈した9歳避妊メスの雑種猫が来院した。特発性乳び胸と診断した。全身麻酔下にて胸腔カテーテルを設置し、低圧持続吸引器に常時接続した。第9病日の試験的開胸術で、重度の線維性胸膜炎による肺葉辺縁の鈍化、右前葉一部、右中葉、左前葉の無気肺を確認した。心嚢膜亜全切除術、胸腔内大網固定術、胸腔カテーテルとPEGチューブの設置を行った。術後も胸腔内の低圧持続吸引を継続し、退院後も飼い主がシリンジによる1日3回の胸水除去と陰圧維持管理を継続した。胸水の貯留は徐々になくなり、第90病日に胸腔カテーテルを抜去した。その後、約7ヶ月が経過しているが、胸水の再貯留は認められず、拡張不全を呈していた肺葉の再拡張が認められた。本症例により、特発性乳び胸に続発した線維性胸膜炎による肺葉の拡張不全は、長期間の陰圧維持管理により改善する可能性がある事が示唆された。