動物循環器病学会学術誌
Online ISSN : 2432-5392
翻訳
猫の心筋症
1. 総論
(監訳) 上地 正実(著者) Kittleson Mark D(著者) Côté Etienne
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電子付録

2022 年 6 巻 1 号 p. 1-19

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抄録

臨床的意義:猫の心筋症は、成猫の飼い猫に最も多く見られる心臓病である。いくつかの病型が確認されており(パート2、3参照)、肥大型心筋症 (HCM)が最も一般的である。臨床的には、これらの心筋症は区別できないことが多い。無徴候性心筋症の猫は、特徴的な身体所見(例:心雑音、ギャロップ音)やX線画像による心肥大を有することも、有さないこともある。重症の猫では心不全の臨床徴候(例:呼吸困難や頻呼吸)または全身性動脈血栓塞栓症(ATE、例:疼痛や麻痺)を発症することがある。突然死も起こりうる。通常、治療によって無徴候性から臨床徴候を伴った疾患への進行が変化することはなく、臨床徴候が明らかになった後の治療法は、心筋症の種類に関係なく同じであることが多い。しかし、心筋症と正常な変化かを区別することは、予後の診断に重要な場合がある。

患者グループ:3ヶ月齢以上の飼い猫であれば、性別や猫種を問わず心筋症を発症する可能性がある。混血の猫で最も多く発症するが特定の猫種はHCMを発症しやすいとされる。

診断:猫の無徴候性心筋症は、身体検査所見、胸部X線写真、および心臓バイオマーカーの結果により疑われることがあるが、多くの場合、臨床的徴候が認められない。臨床的な確認検査としては、心エコー検査が決定的である。左心不全(肺水腫および/または胸水貯留)は、最も一般的にはX線写真で診断されるが、特にX線写真撮影のストレスを避けたい場合には、ポイントオブケア超音波検査やアミノ末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT- proBNP)バイオマーカー検査も有用である。

主な特徴:病態生理学的メカニズムに関する知識は、一次診療獣医師が猫の心筋症を特定し、これらの疾患がどのように進行し、どのように臨床的に現れるか(心不全や動脈血栓塞 栓症)を理解するのに役立つ。既存の診断検査には長所と短所があり、それらを認識することは、一次診療獣医師が最適な紹介を行うのに役立つ。

結論:猫の心筋症には、無徴候の時期(軽度から重度まで)と臨床徴候が現れる時期 (重度)で数種類の病型が存在する。心不全および動脈血栓塞栓症は、重度心筋症の最も一般的な臨床徴候であり、心筋症の種類に関係なく治療対象である。長期的な予後は、明らかな臨床徴候が現れるとしばしば予後不良となる。

解明されていない領域:心筋症と推定される猫の中には、古典的な心筋症に適合する心エコーの特徴を有さないものもある(心筋症-非特異的表現型)。通常、明確な治療法はないが、心筋症がどのように進行していくのかを理解することは、依然として研究の価値がある。

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