獣医情報科学雑誌
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食物・栄養素摂取量の分布型について
光崎 研一福岡 秀雄押田 敏雄赤堀 文昭光崎 龍子和気 三男
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1987 年 1987 巻 18 号 p. 19-26

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抄録

女子栄養短期大学学生とその家族を対象とした栄養調査資料をもとに、食品群別・栄養素摂取量別の度数分布型による検討を試みた結果、
1.食品群摂取量の分布型として、PσLYA分布又は近似を示した食品群は殼類, いも類, 砂糖類, 菓子類, 種実類, 魚介類, 卵類, 乳・乳製品類, その他の野菜類, きのこ類, 海草類および嗜好飲料であり, BINOMIAL分布近似を示したのは, 油脂類および肉類, さらに, POISSON分布近似食品群は豆類, 有色野菜類および果実類であった。また, NORMAL分布は観察されなかった。
2.全国調査 (1971: 豊川) と同様な分布を示した食品群はいも類, 菓子類, 豆類, 乳・乳製品類, 有色野菜類, 果実類および海草類であった。この中で, いも類はPσLYA分布に適合し, かつ, 全国調査とも一致した。
3.性別では, 男女ともにPOISSON分布近似を示した食品群は砂糖類, 種実類, 肉類, 乳・乳製品類, きのこ類, 海草類および嗜好飲料であった。
4.主食である殼類では, 男: POISSON分布近似, 女: BINOMIAL分布近似を示したが, いも類では男: BINOMIAL分布近似, 女: POISSON分布近似を示した。
油脂類, 豆類および有色野菜は, 男: PσLYA分布近似を, 女: BINOMIAL分布近似を示し, 性差がみられた。
5.栄養素別性別分布型では男・女ともにエネルギー, カルシウム, リン, ビタミンB1およびビタミンB2はPσLYA分布近似を, 灰分ではPOISSON分布近似と同じ分布近似を示した。
6.年齢層別にみると, 青年層ではPOISSON分布近似, 成人層ではBINOMIAL分布近似を示す食品群が多かった。また, 魚介類では, 成人層がPσLYA分布近似, 青年層がPOISSON分布近似を示したが, 肉類ではこの逆であった。
7.集団を観察する場合, その集団に関するデータが正規分布をしていない場合は, 求めた平均値は, 必ずしも情報や特性を要約したものとは限らず、代表値としての意義は制限される。集団についての測定値の分布型は, その集団についての全体像の理解と平均値などの代表値の選定に役立つ。これら統計学的考え方に立って, 食品群および栄養素摂取量別の分布型を検討したところ, それらの分布型により, 対象集団の食形態を推察することができ, 分布型検討の意義を見いだすことができた。

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