抄録
2013年2月,A肥育農場で導入後4日以内の65~75日齢の豚群で1~2頭が痙攣,起立不能を呈し,死亡する事例が3回続発した.また同年9月には一貫経営B農場で子豚ハウスへ移動直後の約50日齢の同一豚房の子豚10頭が同様の症状を呈して死亡した.2農場の症例について病性鑑定を実施したところ,剖検では著変はみられず,病理組織学的検査で大脳実質と髄膜への好酸球浸潤及び大脳皮質の層状壊死がみられた.血清の生化学検査でナトリウムイオン濃度と塩素イオン濃度の上昇がみられ,これらの症例を豚の食塩中毒と診断した.また,ナトリウムイオンが上昇している個体では,血清浸透圧の著しい上昇がみられ,BUNの上昇とも連動していた.疫学調査で給水管理に不備があったことから,当該豚は飲水が不十分であったことが食塩中毒の原因と考えられた.豚の食塩中毒では,血清浸透圧測定は,脱水の程度を判定する上で有用であると考えられる.