2021 年 74 巻 5 号 p. 310-314
150日齢の肥育豚が下痢を呈して死亡したため剖検を行ったところ,肺の赤色肝変化病巣と回盲部粘膜の肥厚が認められた.病理組織学的に,肺では,小葉性に気管支及び細気管支腔内での細胞退廃物の貯留と好中球浸潤が認められた.肺胞腔は好中球の高度浸潤及び細胞退廃物の貯留によりしばしば閉塞していた.回盲部では多発性に偽膜を伴う粘膜の壊死巣がみられた.肺及び腸管の内容より,Salmonella Typhimurium(ST)が分離された.サルモネラ抗血清を使用した免疫組織化学的染色では,肺及び回盲部の病変に一致し陽性像が認められた.以上より,本例の肺病変の病理発生にSTが深く関与していることが示唆された.