日本獣医師会雑誌
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小動物臨床関連部門
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2感染により呼吸器症状を呈した飼い猫の1例
山田 恭嗣黒田 雄大山本 つかさ西尾 悠誠山田 チズ子小林 満利子森嶋 康之前田 健
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2022 年 75 巻 4 号 p. e62-e68

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抄録

12歳の室内飼育猫が,くしゃみ,膿性鼻汁及び咳などの呼吸器症状を呈していたため,発症5日目に口腔スワブを採取し,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の遺伝子検査を実施した.その結果,SARS-CoV-2遺伝子が検出された.発症8日目に症状が悪化したため,当院にて一般身体検査,血液検査,胸部X線検査及び治療を行った.飼い猫には軽度の気管支炎と血清アミロイドA(SAA)の増加が認められたが,肺炎には至っていなかった.また,口腔内,鼻腔内及び肛門内のスワブを採取し,得られたサンプルの全ゲノム解析を行った結果,SARS-CoV-2デルタ株に感染していたことが明らかになった.その後猫は回復し,回復後の血清に有意なSARS-CoV-2中和抗体価の上昇が観察された.本症例は,SARS-CoV-2感染により呼吸器症状を呈した国内最初の動物の報告である.

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