1992 年 45 巻 1 号 p. 13-18
血漿リン脂質 (PL) と総コレステロール (T-cho) の生理的ならびに病態生理的変動を種々の生理状態の牛と肝臓機能障害牛を用いて調査した. その結果, PL濃度, 血漿リン脂質分画比 (PC/SM) 比は飼料中粗脂肪給与量の増加に伴い増加傾向がみられたが, PL/T-cho比は大きな変動はなかった. また, PL濃度PC/SM比は分娩直後に減少したが, 分娩後のPL濃度の増加に伴いPC/SM比も増加した. PL/T-cho比は分娩前後に増加し, その変動は血清総胆汁酸濃度と同様な傾向を示した. 肝臓障害牛では発症時にPL-cho比は減少し, 発症以後は臨床症状が回復するまで高値が継続した. また, 特発性心筋症例のPL/T-cho比は発症6-3週前に減少が認められた. さらに, 肝臓障害が認められた搾乳牛群 (20頭) のPL/T-cho比は対照牛群 (10頭) に比較して高値を示したが, PC/SM比には大きな差はみられなかった
これらのことはPC/SM比は牛では生理的変動が大きく臨床的に応用することが困難であるが, PL/T-cho比は病態により変動するため予後判定の指標として有用と考えられる