1992 年 45 巻 4 号 p. 262-268
猫汎白血球減少症ウイルス (FPLV) と猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス (FVRV) および猫カリシウイルス (FCV) の3種混合不活化ワクチンを開発する目的で, 各ウイルス抗原の猫に対する免疫原性を調べた結果, FPLV, FCVでは各ウイルス液を単にホルマリンで不活化した抗原よりも, それをさらに濃縮することにより高力価の抗体産生が認められた.いっぽう, FVRVでは感染細胞を可溶化し, それにオイルアジュバントを加えた抗原で, 最も高い抗体応答が認められた.したがって, FPLVとFCVは濃縮不活化抗原, FVRVは可溶化不活化抗原の3者を混合して凍結乾燥し, これにオイルアジュバントを70%含有する溶解用液で溶解して使用する猫3種混合不活化ワクチン (F3V・OE) を開発した.
3-5カ月齢の猫にF3V・OEを3週間隔で2回注射後, 6カ月後にFPLV, FVRVおよびFCVの強毒ウイルスで攻撃試験を行ったところ, ほぼ無症状で耐過した.
3-5カ月齢の猫にF3V・OEを1または3規定量, 3週間隔で2回注射後, 1週目から3週間隔で経日的に15週目まで剖検し, 注射局所の病理学的な観察を行った.観察期間中試験猫は臨床的に全く異常は認められず, 注射局所所見は3規定量注射群において1週目に軽い腫脹を認めたが, 3週以後は消失した.1規定量注射群では, 腫脹や出血などの肉眼的所見ならびに筋肉の変性や壊死などの組織学的な変化は認められなかったが, オイルシスト形成, リンパ系細胞の浸潤, 集簇は, 9週目まで認められ12週目以後は認められなかった.
以上の成績から, F3V・OEは猫に対して有効性および安全性に優れるワクチンであることが示唆された.