抄録
犬 (ラブラドール・レトリバー), 去勢雄, 11歳, 体重35kgが, 四肢麻痺のため起立困難となった. MRI検査で右側第5第6頸椎間より脊髄に侵入する腫瘍が認められた. 剖検したところ右第6頸神経基部神経上膜内に軟骨様で硬固感のある半透明, 白色の神経と連続する腫瘍 (1×1.5×2.5cm) が存在し, 脊柱管内では脊髄硬膜外で塊を形成, 第5頸髄を圧迫していた. 腫瘍組織では軟骨様の腫瘍細胞が分葉状に増殖, 軟骨基質を形成し, 核の腫大, 大小不同, 複核の細胞の他, 少数ながら核分裂像も認められた. 抗S-100蛋白抗体を用いた免疫染色では, 腫瘍細胞細胞質と核が陽性となった. 原発部位は第6頸神経上膜内と考えられ, 間葉系細胞を起源とする骨外性軟骨肉腫と診断した. 骨外性軟骨肉腫の発生は非常にまれで, 末梢神経内に発生したとの報告は見当たらなかった.