2000 年 62 巻 9 号 p. 971-975
アミノグリコシド系抗生物質は腎近位尿細管内腔から近位尿細管細胞内に取り込まれて蓄積し,腎毒性を惹起することが知られている.アミノグリコシド系抗生物質の膜結合親和性や膜透過性は近位尿細管細胞の刷子縁膜(BBM)と基底膜(BLM)とでは異なっている.それゆえ,この研究はアミノグリコシド系抗生物質のゲンタマイシン(GM)をブタ腎近位尿細管上皮由来の株化細胞LLC−PK1のBBM側またはBLM側へ適用し,毒性の差異について検討した.LLC−PK1細胞は小孔を有したメンブレン上に培養し,単相上皮形成後にGMをBBM側またはBLM側に添加した.GMはLLC−PK1細胞小器官からの酵素遊離を惹起し,BLM側よりもBBM側に添加した方がより高い酵素遊離が認められた.[3H]GMのLLC−PK1細胞のBBM側とBLM側からの細胞内取り込み様式は異なり,BBM側からの取り込みは経時的に増加したが,BLM側からの取り込みは急速な飽和状態を示した.以上の結果から,アミノグリコシド系抗生物質は培養腎上皮細胞のBBM側またはBLM側に添加した時に毒性的差異や異なった細胞内取り込み様式を示すことが示唆された.