1982 年 44 巻 1 号 p. 107-113
北海道の某サラブレッド生産牧場の不妊馬を対象として細菌検索を進めていたところ, 1980年5月, 子宮頸管からの白濁粘液の排泄および外子宮口の充血と浮腫を主徴とする臨床症状を示す雌馬が多数発見された. これらの臨床所見は1976年アイルランドで初めて発生したいわゆる馬伝染性子宮炎のそれと一致した. 罹患馬の外子宮口ぬぐい液を5%馬血液加ユーゴンチョコレート寒天培地を用い, 10%CO2存在下で培養したところ, 17頭の材料から直径 0.5-2.0mm の円形, 辺縁円滑, 灰白色の光沢あるコロニーを形成し, グラム陰性, オキシダーゼおよびカタラーゼ試験陽性の短桿菌を分離した. この菌は他の生物学的性状, 酵素活性試験, 対照株ケンタッキー188との交差凝集反応から馬伝染性子宮炎の病原体 Haemophilus equigenitalis と同定された. また, H. equigenitalis を分離した馬は凝集反応と補体結合反応で抗体の上昇を確認し, これらの反応が感染初期の判定に効果があることを明らかにした.