抄録
草食性ハタネズミの新生仔(204匹)をマウスに授乳させ, 離乳後, 低線維・高炭水化物食のマウス用ペレットのみで飼育すると, 約50%の個体に高血糖を伴なう食餌性糖尿病が誘発された. 糖尿病例では, 前胃pHおよび発酵能が著しく低下し, かなりの量の食餌が未発酵のまま十二指腸ヘ送られ, 炭水化物が分解され, グルコースの形で吸収されて高血糖が誘発されるものと推察された. 正常ハタネズミでは, グルコース投与2分後に血漿インスリン値がピークに達し, マウスのそれと類似したパターンを示したが, 糖尿病初期のハタネズミでは, インスリン値は, 絶食後も正常値(21.5μU/ml)の2~5倍(50~100μU/ml)を示し, グルコース投与により, インスリン分泌がさらに促進された. 末期には, インスリン値は著しく低下し, グルコースに対するインスリン応答は, ほとんど消失した. いっぽう, 糖尿病初期では, 膵島B細胞においてインスリンの盛んな生合成と分泌を示す組織像がみられたが, 未期には, 細胞の空胞化や核消失などが顕著で, インスリン分泌の著しい低下を示す所見が認められた.