抄録
成牛の各部胃粘膜における上皮下弾性線維の配列を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いて観察した.各部で,固有層深部の線維叢に発した線維が上皮に向かって分枝しながら伸び,上皮基底膜にほぼ直角に結合する基本様式を示していた.この結合枝は透過電子顕微鏡的にはoxytalan線維もしくは細いelaunin線維の形態を示していた.線維分布の多い部位は第一胃前房の上方部,第一胃筋住,第二胃稜,鈎爪状乳頭,第三胃全域であった.特に鈎爪状乳頭と第三胃乳頭は特徴ある線維配列を示し,立体的な弾性線維網とその表面から分枝するおびただしい数の上皮との結合枝を有していた.線維分布の少ない部位は第一胃のほとんどの領域と第二胃小室の底部,また幽門部を除く第四胃の各粘膜であった.これらの結果は上皮下弾性線維の配列が胃粘膜各部に受ける機械的ストレスの状態によって異なることを示唆している.