Journal of Veterinary Medical Science
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馬におけるウマヘルペスウイルス1型および4型感染の疫学的様相
松村 富夫杉浦 健夫今川 浩福永 昌夫鎌田 正信
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1992 年 54 巻 2 号 p. 207-211

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抄録

わが国の馬におけるウマヘルペスウイルス1型と4型の感染状況を明らかにするために, 1979年から1990年にかけて, 呼吸器症状を呈した馬からのウイルス分離と同定を実施した. その結果, 1型ウイルス42株と4型ウイルス64株が, それぞれ分離同定された. 1型ウイルスは, トレーニングセンター(トレセン)の競走馬群においてのみ, 冬季間に呼吸器疾患が流行した際に限って分離された. 4型ウイルスは, 生産牧場の当歳馬群と明け2歳馬群, 育成牧場の育成馬群, 当研究所の明け2歳馬群およびトレセンの競走馬群の今回調査したすべての馬群において, 季節に関係なく分離された. また, 今回の調査では, 白血球を含んだ血漿材料から4型ウイルスが4株分離され, これまで1型でしか報告のなかった血中のウイルスの存在(cell-associated viremia)が4型においても証明された. 併せて, 最近の9年間に日高地方で流産胎児から分離された87株のウイルスが, すべて1型ウイルスと同定された. これらの結果から, わが国においては, 1型ウイルスは冬季間における競走馬の呼吸器疾患の流行と妊娠馬の流産発生に関与し, 4型ウイルスはすべての馬群内に季節と無関係に広く伝播し呼吸器疾患に関与していることが示唆された.

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