1992 年 54 巻 2 号 p. 221-228
20-methylcholanthrene(MC)自家誘発腫瘍担癌ラットにトキソプラズマ溶解抗原(TLA)を投与すると, 腫瘍増殖の抑制が観察された. このTLAの抗腫瘍効果は腫瘍が小さいほど明瞭に観察された. また, 腫瘍形成前にTLAを投与されたラットでは, 僅かながら腫蕩形成の遅延が認められた. 腫瘍部の病理組織学的検索では, 無処置対照ラットにおいて紡錐形腫瘍細胞の密な増殖が特徴的であったのに対して, TLA治療されたラットではリンパ球および好中球の浸潤を伴った広範な中心壊死が観察された. 抗Thy-1抗体を用いた腫蕩部の免疫組織学的検索では, 無処置対照ラットでは僅かな小型陽性細胞が認められたのに対して, TLA治療ラットでは顆粒を持つ大型陽性細胞が散在性に認められた. これらの結果から, TLAがラットのMC自家誘発腫瘍に対して, 宿主介在性の抗腫瘍効果を発現する有効な生体応答修正・修飾物質の一つであることが示された.