1992 年 54 巻 2 号 p. 275-279
組み替え型ヒト腫傷壊死因子(rhTNF)によるマウス由来L929細胞におけるDNAフラグメンテーションの誘発についてアルカリ溶出法を用いて検討を行った. rhTNF処理で生じたDNAフラグメントのアルカリで溶出される量はX線による場合とは異なっており, このことよりX線により誘発されるDNA単鎖切断とは異なるものと考えられた. また, rhTNFによるDNAフラグメンテーションは処理時間および濃度依存性に認められた. rhTNFにより誘発されるDNAフラグメンテーションと細胞障害性との間に強い相関関係が認められたが, 他の障害も関与していることが考察された. DNAのプロテネースKによる消化でrhTNFによるDNAフラグメンテーションは増加されず, これらの結果より, L929細胞におけるrhTNFの細胞障害性はDNAフラグメンテーションの誘発に関与し, DNA-タンパク質のクロスリンキングに関与していないことが示唆された.