Journal of Veterinary Medical Science
Online ISSN : 1347-7439
Print ISSN : 0916-7250
ISSN-L : 0916-7250
豚流行性下痢症ウイルスの培養細胞での分離とその性状
草薙 公一桑原 博義加藤 哲雄布谷 鉄夫石川 義久鮫島 都郷田島 正典
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 54 巻 2 号 p. 313-318

詳細
抄録

豚流行性下痢症ウイルス(PEDV)が豚の急性下痢症から分離され, 子豚で継代された豚コロナウイルス83P-5株に実験的感染した子豚の小腸からVero細胞培養に分離された. PEDVの分離は, トリプシンを添加した維持培地(MM)で保持したVero細胞においてのみ成功した. 感染Vero細胞は, 細胞融合と合肥体形成を特徴とするCPEを示し, かつ抗83P-5ウイルス家兎血清を用いた間接蛍光抗体法により細胞質に特異蛍光を示した. この分離株は, トリプシン添加MMで保持したVero細胞培養で連続継代し得るように順化された. Vero細胞順化PEDVは, トリプシンを含むMMで保持したMAl04, CPK及びESK株化細胞においても増殖した. Vero細胞順化PEDVは, コロナウイルス科の他のウイルスの形態学的及び理化学性状に類似の特性を有していた. しかしながら血清学的には豚伝染性胃腸炎ウイルス及び血球凝集性脳脊髄炎ウイルスとは異なり, また間接蛍光抗体法により豚伝染性胃腸炎ウイルスとの抗原的関係は認められなかった. 6種類の豚胎子初代細胞及び10種類の株化細胞を用いてPEDVの分離及びVero細胞順化PEDVの増殖を試みたが4種類の株化細胞(Vero, MAl04, CPK, ESK)を除いてはすべて失敗に終った. 失敗の原因は, これらの細胞がトリプシンの作用によって強い傷害を受けるためであろうと考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本獣医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top