1992 年 54 巻 3 号 p. 465-472
ポジティブー本鎖RNAウイルスであるマウス肝炎ウイルス(MHV)のリーダーRNAに相補的なオリゴヌクレオチドでマウスDBT細胞を処理した場合のウイルス増殖に対する影響を検討した. 使用した14塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチドはリーダーRNAとMHVの7種のmRNA転写開始位置に共通して見られる塩基配列 UCUAA を含む領域に相補的な配列で合成された. このアンチセンスオリゴヌクレオチドの処理によって細胞内でのウイルス増殖やウイルス特異的mRNAやNタンパク質の合成が抑制されることが示された. 対応するセンスオリゴヌクレオチドやMHVの配列と関係のない配列を有するオリゴヌクレオチドの処理ではその様な阻害効果は認められなかった. これらの結果はリーダーRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドがMHVの増殖を抑制することを示している.