1992 年 54 巻 5 号 p. 1043-1046
ラット精巣精子を, クロラムフェニコール(100μg/ml), 及びシクロヘキシミド(100μg/ml)のそれぞれを含む199-Earle培養液(1%仔牛血清を含む)で, 3時間培養し, 精子頭部のトリプシン耐性の変化を観察した. 結果は, これらの阻害剤を含む培養液, 及び阻害剤を含まない培養液で培養した各精子の生存率の間に差はなく, いずれの培養精子でも培養前より頭部のトリプシン耐性は増加した. ゲル電気泳動によるタンパク質泳動パターンは, 各培養精子で異なり, これら阻害剤が生存率に影響を与える事なく有効であった事を示した. 以上の事は, 培養後の精巣精子におけるトリプシン耐性の増加が, 精子の死によるものでなく, かつ精子のタンパク合成とは独立した現象であるらしい事を示唆した.