1992 年 54 巻 5 号 p. 931-936
高温暴露時のラットの体温の反応には, 個体により一相性, ニ相性, 三相性反応がある. この他に少数ながら存在する高いオーバーシュートのある個体と高い平衡相のある個体の反応型を検討した. その結果, オーバーシュートの高さと生存時間との間には負の相関があった. 平衡相の高さと生存時間の間にも負の相関があった. つまり, オーバーシュートや平衡レベルが高いほど, 生存時間が短かかった. 最も低いオーバーシュート及び平衡相は41.0℃及び40.0℃付近にあり, 両型が三相性反応の未熟な型であることを示していた. 他方, ラットを熱死させずに生存時間を求める予測式の改良を試みた. 体温が42.0℃になる時間(X)と生存時間(Y)の一式回帰式は, 雄でY=0.963X+43.85, 雌でY=0.973X+39.10であった. その決定係数は雄で0.978(P<0.0001), 雌で0.989(P>0.0001)であり, 推定式として使用可能であった. 42.0℃以上のオーバーシュートや高い平衡相のある個体のうち一部では, 依然として従来の予測式によるしかない. 従来の方法では体温が42.5℃まで上昇するが, その影響を一年間前方視的に観察した結果, その後の生存数も, 産仔数もともに無処置群との間に差はなかった.