1993 年 55 巻 1 号 p. 99-106
牛白血病ウイルス(BLV)が持続感染している二種の細胞(LK15およびBat2cl1)の培養液から不活化ワクチンを作製し, 牛に対する免疫原性と感染防御を検討した. 試験牛12頭は4週間間隔で2回筋肉内に接種し, その4週間後に100μlあたり約70~100個のシンシウスを形成するBLV感染牛血液で攻撃した. LK15ワクチンで免疫した9頭は攻撃時BLVgp抗原に対し1:16~64倍の寒天ゲル内沈降抗体(gp抗体)を保有し, このうち100μlの感染血液で攻撃した4頭はすべて感染防御を示したが, 500μlで攻撃した5頭では2頭が防御を示したにすぎなかった. Batワクチンで免疫した3頭は1:8~64倍のgp抗体を産生し, 100μlの攻撃に対し2頭に感染がみられた. 感染防御を示し, ワクチネーション後32週間経過した各牛のgp抗体価は1:2~8倍に低下した. この時100μlのBLV感染血液で再攻撃した2頭はいずれも防御を示さなかったが, 同時期に1回LK15ワクチンで再免疫した2頭はその4週間後に1:16~32倍のgp抗体の産生がみられ, 100μlのBLV感染血液の攻撃に対し再度感染防御を示した. 用いたBLV感染血液(100μl)の攻撃に対する感染防御には, 攻撃時に少なくとも16倍もしくはそれ以上のgp抗体価が必要と考えられた.