Journal of Veterinary Medical Science
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Babesia gibsoni感染犬血清の溶血活性-自己と非自己赤血球とによる活性の差異
大西 堂文鈴木 佐代子堀江 牧夫橋本 昌俊梶川 武次大石 巌江島 博康
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1993 年 55 巻 2 号 p. 203-206

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抄録

既に報告したようにBabesia gibsoni感染犬の血清中溶血活性は, 貧血の進行と共に上昇する. 感染犬から得た同一血清について, 異なる個体から得た非自己赤血球で溶血活性を測定すると活性値の分散は大きい. しかし, 自己赤血球(感染犬の赤血球)あるいはある同一の個体から得た非自己赤血球で測定すると分散は小さかった. 非自己赤血球による活性値の分散と犬の赤血球型別とを検討したが, 関連性はみられなかった. 血清中溶血活性は, 血清を加熱処理しても低下することはなく, 溶血活性の上昇に補体の関与はないと考えられた. また, B. gibsoni感染・非感染犬で赤血球の脆弱性にも違いはみられなかった. 血清中溶血活性は実験的感染の初期から上昇したが, 2~3週間後(感染後期)には低下し, Hematocrit値も徐々に回復を示した. この感染後期の溶血活性の変化は, 非自己赤血球より自己赤血球で測定した場合, より急激な低下を示した. このことは感染後期の溶血活性の変化は, 血清中に存在する溶血因子ではなく自己赤血球の組成の変化によることを示している. このような結果は, B. gobsoniによる感染後, 血中溶血活性の上昇と並行して著しい貧血が発症すると, 血清中溶血因子に抵抗性をもつ赤血球が出現し, 溶血性貧血の進行が抑制されることを示唆している.

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