1993 年 55 巻 3 号 p. 415-420
ハイブリドーマ株RM-1由来のモノクローナル抗体(MoAb)により, 特異的に認識されるラット肝細胞膜特異抗原の種および臓器特異性, ならびに個体発生過程におけるその発現様式を免疫組織化学的に検討した. ラットにおいては, このMoAbにより認識される抗原は肝細胞膜にのみ認められ, 脳, 胸腺, 肺, 心臓, 胃, 小腸, 大腸, 脾, 腎, 精巣および骨格筋には検出されなかった. マウス, モルモット, イヌ, ネコ, ウシ, ニワトリ, サルおよびヒトの肝組織では, このMoAbと特異的に反応する抗原は認められなかった. また同抗原は妊娠18日齢以前の胎児肝には検出されず, 妊娠19日齢から肝細胞接合部の膜に発現した. その抗原は生後急速に増加し, 生後25日までに肝細胞細胞膜全周に認められるようになった. 以上の成績から, このMoAbにより認識される抗原は種および臓器特異抗原であり, 肝細胞の成熱とともにその発現量は増加し, その局在様式も変化することが明らかになった.