Journal of Veterinary Medical Science
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犬の肺血管外水分量による肺水腫の評価
平川 篤坂本 紘三角 一浩上村 利也清水 亮佑
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1993 年 55 巻 6 号 p. 995-1000

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抄録

Extravascular thermal volume(以下ETV)による肺水腫の病態を評価する目的で,正常犬と実験的に作製した肺水腫犬におけるETVと胸部X線像とを対比して検討した. ETVは熱とNaを用いる二重指示薬希釈法で測定した. その結果正常犬のETVは, 8.20±1.44ml/kg(mcan±SD)であった. 肺水腫犬では, ETVが11ml/kgを越えると肺野を中心とした不透過性の充進像が認められ, 15ml/kg以上で明らかな水腫像が認められた. しかし, ETVが更に増加してもX線像にはより不透過性充進の所見は認められなかった. また, ETVとPaO2との間には有意な相関が認められたが, ETVと膠質浸透圧(Colloid oncotic pressure, 以下COP), ETVと肺動脈楔入圧(PAWP), ETVとPAWP-COPとの間には有意な相関は認められなかった. 以上の結果より, ETVを測定することは従来のX線所見では判読が困難であった重度な肺水腫においても重症度を数値で判断でき, 肺水腫の病態を定量的に診断するために有用であり, 肺水腫の早期発見, 早期治療が可能であることが示唆された.

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