1994 年 56 巻 1 号 p. 125-129
ウシ肝細胞を分離・培養し, 代謝特性を調べた. 肝細胞は, ウシ肝臓の尾状突起に0.25mM EGTAと0.05%コラゲナーゼを灌流して分離した. 細胞の生存率は70-92%で, 収率は0.1-3.6×107個/g肝臓だった. 分離肝細胞をウイリアムスE培地で培養したところ, 3時間後に伸展が始まり, 24時間後には単層を形成し, この単層は6日間維持された. 肝特異的な代謝機能の一つであるアルブミンの合成・分泌について, 細胞を[35S]-メチオニン存在下で培養しその上清を免疫沈降して分析したところ, 分離直後の肝細胞では低かったが培養1~3日後には増加し6日後には再び減少した. さらに, エピネフリンによって活性化されるグリコーゲン分解を, 培養液中に放出されたグルコース量で調べたところ, アルブミンの分泌と同様に, 培養1~3日後には増加したが6日後には減少した. この様に, 分離した肝細胞を培養すると, 肝特異的な機能であるアルブミン合成とグリコーゲン分解能が, 数日間保持されており, ウシの肝機能を細胞・分子レベルで研究するのに有用と考えられる.