Journal of Veterinary Medical Science
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腰痿を呈する若齢馬19頭の頸部X線所見と頚髄の病理組織学的所見の関係
冨澤 伸行西村 亮平佐々木 伸雄中山 裕之廉沢 剛仙波 裕之竹内 啓
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1994 年 56 巻 2 号 p. 227-233

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抄録

腰痿症状を呈した軽種若齢馬19頭(牡17頭, 発症年齢6-21ヵ月)の頸部X線検査所見と頸髄の病理組織学的所見の比較検討を行った. 頸椎のX線写真からminimum sagittal diameter (MSD), minimum flexion diameter (MFD)およびminimum dural sagittal diameter (MDD)を計測し標準値範囲と比較した結果, MSDが低値を示したものは19頭中14頭, MDDが低値を示したものは6頭であった. また, MFDが低値を示したものは5頭で, 全て屈曲位の脊髄造影写真で明らかな脊髄の圧迫像が認められた. 病理組織学的所見では, ほぼ対称に頸髄白質部の軸索および髄鞘の消失, 海綿状変化, マクロファージの出現を認め, 当該病変部位とX線所見の異常部位が一致したものは12頭であった. 6頭の後部頸椎の骨標本において, 左右の関節突起の不対称性の増大, 関節面の椎間孔への突出, 関節突起周囲の骨棘形成が認められた. 以上の結果, 若齢馬の腰痿の原因として頸椎の変形に起因する脊髄の圧迫変性が強く疑われた. このため, 頸部X線検査が診断上きわめて重要かつ有効な手段であると考えられた.

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