Journal of Veterinary Medical Science
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ニワトリ始原生殖細胞特異抗原の解析
前田 誠司大迫 誠一郎九郎丸 正道林 良博西田 隆雄
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1994 年 56 巻 2 号 p. 315-320

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抄録

ニワトリ始原生殖細胞(PGC)の分化要因を解析する目的で, 孵卵6日齢の白色レグホン胚子の未分化生殖腺を免疫原として, 単クローン抗体を作製した. 免疫組織化学的解析(ABC法)の結果, PGC特異抗体2C9は, 生殖新月環(孵卵1日齢)に出現した一部のPGCに, はじめて反応性を示した. また, 胚盤葉下層にも同様の反応がみられることから, この時期に, PGCが, 本抗原を取り込むか, あるいは, その産生を開始すると推測される. その後, 移動期・定住期を経て, 性分化期直後までPGCの細胞質に顆粒状の陽性反応がみられた.雌においては, 孵卵8日目に反応が消失するが, 雄では, 10日頃から反応が減少し始め, 14日までに完全に消失する. これら雌雄のPGCsの反応消失は, それぞれ卵祖細胞, 精祖細胞分化期とほぼ一致することから, PGCが精, 卵祖細胞へ分化するとともに本抗原が消失すると考えられる. ニワトリ胚体内組織の交差反応は, 肝細胞, 消化管粘膜上皮, 中腎細管にみられ, 生殖腺も含め, これらの組織での免疫ブロッティングの結果, 109 kDaおよび, 64 kDaの2種のバンドが検出された. この結果から, 2C9抗体は, その局在部位を問わず, 同じ抗原を認識することが示唆された. この2C9抗体は, ニワトリ生殖細胞分化の有用なプローブとなるであろう.

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