1994 年 56 巻 5 号 p. 887-890
北海道のぼりべつクマ牧場で飼育されているエゾヒグマについて, ヒトの分野でその有用性が認められているミニサテライトプローブ "Myo"を用いDNAフィンガープリントを作成し, 個体識別, 父子判定への応用の可能性について検討した. HinfI, HaeIIIの2種類の制限酵素を用いて作成したDNAフィンガープリント像より, 飼育個体群内での偶然に同じバンドパターンを持つ個体が出現する確率を求めたところ, 2.5×10-2および1.3×10-1という値がそれぞれ得られた. 特に, HinfIについてはこれまでにイヌや家畜について報告されている値と対応しており, エゾヒグマにおいてもMyoの個体識別への応用が可能であることが示唆された. また, 父子判定については, 父親由来のバンドが少ない傾向が見られたが, バンドパターンは, 正しい親子関係を示すものであった.