抄録
子宮内膜は胚の接着, および着床に重要な役割を果たしている. そこで, リピートブリーダー牛における子宮内膜の形態学的変化を組織学的に検討した. リピートブリーダー牛5例, 正常経産牛5例および正常未経産牛5例の発情後1日目(発情発見日=0日目)および8日目の子宮内膜をバイオプシーにより採取した. 発情後1日目において, 腺細胞の核分裂像は, 正常牛で認められたが, リピートブリーダー牛では認められなかった. 逆に, 子宮腺内分泌物および肝細胞の核上空胞は, 正常牛では少ないかあるいは認められなかったのに対し, リピートブリーダー牛では観察された. 一方, 間質では両者で浮腫が認められ, 両者間に相違点は認められなかった. 発情後8日目では, 両者ともに子宮腺内分泌物が多く認められた. 一方, 間質の核分裂像および偽脱落膜反応像は, 正常牛で多く認められたが, リピートブリーダー牛ではわずかしか認められなかった, リピートブリーダー牛では, 発情期における子宮腺の組織像および黄体開花期における間質細胞の組織像が, 正常牛で観察される組織像と一致しないことから, これらの部位の周期的変化は異なる調節系によることが推察される. これらの結果から, 子宮腺と間質細胞が発情後の日数経過にともなって逐日的に変化しない場合に受胎しない可能性が示された.