1995 年 57 巻 2 号 p. 293-297
ドパミンおよびドブタミンの肝臓循環に及ほす選択的影響を12頭の雑種成犬を用いて検討した. ドパミンの投与によって門脈血流量は用量依存性に増加し, 肝動脈血流量は用量依存性に減少した. 特にドパミン3μg/kg/min投与時には, 腸間膜領域の血管拡張が起こり心拍出量中の門脈血流量の分布率が増加した. ドブタミン5および10μg/kg/min投与時には門脈血流量および肝動脈血流量のいずれも有意に増加した. しかしながら, ドブタミン15μg/kg/min投与時には肝動脈血流量は著明に低下した. 総肝血流量はドパミンおよびドブタミン投与時に著明に増加した. しかし, 心拍出量中の総肝血流量の分布率の増加は認められなかった. 肝内門脈系の有効灌流圧はドパミンおよびドブタミンの投与によって変化しなかった. 本実験結果からドパミンおよびドブタミンの投与によって肝血流量は選択的に増加しないことが判明した.