1995 年 57 巻 3 号 p. 439-445
犬ジステンパーウイルス(CDV)感染の迅速診断法の開発を目的に, 犬末梢血単核細胞から抽出したRNAを用いてRT-PCRを行い, CDVヌクレオカプシド(NP)遺伝子の検出を試みた. 用いた2組のプライマーは, NP遺伝子の2つの異なる領域を増幅するよう作られた. CDV Onderstepoort株を含む6種類の実験室継代株および実験感染によるCDV感染イヌを用いたRT-PCRの結果, すべての検体から効率よく増幅されたNP遺伝子断片が認められた. CDVワクチン歴のあるイヌも含め, 健常犬52頭からはNP遺伝子は検出されなかったが, CD様臨床症状を示すイヌ32頭中17頭より遺伝子が認められた. NP遺伝子を標的とするRT-PCR法は,検出感度の高い, 迅速で信頼のおける犬ジステンパーの診断法として有用であると思われる.