1995 年 57 巻 3 号 p. 453-457
これまでに我々はシバヤギ用の脳定位固定装置を開発し脳室造影法を組み合わせることで精度の高い脳定位手術法を実用化してきた. 本研究では, より簡便でかつ十分な再現性を持つ脳定位法を開発することを目的に, 頭骸骨形態の個体差および間脳視床下部との位置関係について詳細に検討した.その結果, 頭骸骨の3部位(前頭洞中隔尾腹側部と師骨鶏冠との連結部 (a), 外後頭骨隆起(b), および外耳道)から形成される三角形は個体差が小さく, また脳室系および視床下部神経核との位置関係も比較的一定であることが明らかとなった. この3部位の位置を基準として脳定位装置に頭部を固定する方法を採用することにより, 視床下部とその周辺構造に対する脳定位的アプローチの再現性が向上し, 例えば前交連および漏斗陥凹の前後方向の座標値とab間距離との間には高い相関(r=0.9)が得られるなど, 脳室造影のような複雑な手技を用いなくとも, 精度の高い脳定位手術を実施することが可能となった.