1995 年 57 巻 3 号 p. 481-485
血管透過性亢進充造型肺水腫における肺血管外水分量(ELWV)と胸部X線撮影像とを比較するため, オレイン酸による軽度から中等度の肺水腫モデル犬を作出し, ELWV, 胸部X線所見および血液ガス分析結果の相互関係について検討した. オレイン酸投与後, ELWVが約37%の有意な上昇を示した時点で, 胸部X線所見に軽度な肺水腫像を認めたが, この時点での胸部のX線吸収量の増加は約10%であった. ELWVの増加に伴い, PaO2の減少, PaCO2の増加がみられ, 肺の換気能の低下が明らかとなった. したがって, 血管透過性亢進型肺水腫作出モデル犬において, 熱いNa二重指示薬希釈法により得られたELWVは, X線写真上に変化が認められないような軽度の肺水腫を検出するために有効と考えられた. また, 血管透過性亢進型肺水腫における胸部X線写真では肺水腫がかなり進行して初めてその所見が現れるため, 胸部X線写真は軽度の血管透過性亢進型肺水腫のよい指標とはならないと考えられた.