1996 年 58 巻 3 号 p. 181-190
当研究所で維持あるいは業者より購入した7~100ヶ月齢のマーモセット(Callithix jucchus)の雄39匹, 雌22匹について病理組織学的検査を行った. 幾つかの臓器で特徴的に認められた所見は髄外造血であり, 造血巣は腸間膜リンパ節, 脾臓, 肝臓, 腎臓, 副腎および大脳脈絡叢にみられた. また, 肺胞壁毛細血管内には巨核球がしばしば観察された. マーモセットの組織学的検査の際には, これらの臓器における造血巣が偶発的なものか, あるいは頻回採血や毒性影響の結果として発現したものかを区別することが重要である. また, 造血巣は巨核球を含む多様な細胞成分で構成されていることから, 炎症や造血組織の腫瘍とは容易に鑑別できる. 瀕死期安楽殺および死亡動物では, 小腸結腸炎が高頻度に認められた. その他, 胸腺の退縮, 伊東細胞の顕著な空胞化, 尿細管の好塩基性変化が高頻度に認められた. 特に肝臓および腎臓は化合物投与によって毒性影響を受け易い臓器であることから, 自然発生病変と毒性病変との鑑別が重要になると思われる. 頚部皮膚に炎症性変化や細胞異型を伴わないアポクリン腺の増生巣が認められた. その機能的意義は明らかでないが, マーモセット特有の構造かもしれない.