1996 年 58 巻 4 号 p. 285-290
以前, フレンドウイルスをラットに継代するとラットに振せんと麻痺を誘発する変異株PVCウイルス(PVC111, PVC211, PVC321, PVC441)が分離されることを報告した. 今回, これらのウイルスのマウスにおける病原性について検討した. いずれのウイルスの感染においてもNFSマウスの脊髄には海綿状変性が観察されたが, PVC441ウイルス感染マウスのみが明らかな振せん, 麻痺症状を示した. 長期間を経た後, これらのウイルスが感染したマウスはすべて重度の貧血を伴う白血病を発症した. PVC441ウイルスを用いた実験では神経症状の発現にはウイルス量及び日齢依存性のあることが判明した. PVC441ウイルスを用いてマウスの感受性の系統差を調べたところ, BALB/c, DBA/2, C57BL/6マウスは抵抗性であることがわかった. しかし, BALB/cマウスの脊髄には重度の海綿状変性が観察された. 一方, DBA/2, C57BL/6マウスでは限局された部位で軽度の変性が観察されたのみであった. NFSマウスとこれらのマウスを交配し, 抵抗性の遺伝的背景を調べたところ, 多様な遺伝子が神経症状誘発に関与していることがわかった.