Journal of Veterinary Medical Science
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実験的重度静水圧性肺水腫犬に対するPEEPの心肺機能ならびに肺血管外水分量に及ぼす影響
平川 篤坂本 紘清水 亮佑
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1996 年 58 巻 4 号 p. 349-354

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抄録

実験的重度肺水腫犬を用い, Positive end-expiratory pressure (以下PEEP)に対する心肺機能ならびに肺血管外水分量に及ぼす影響について検討した. 肺水腫は, 左心房内のバルーンを膨脹すると同時に肺動脈に温ブドウ糖液を急速静注することにより作成した. 肺血管外水分量(extravascular lung water : EVLW)は, 熱とNaを用いる二重指示薬希釈法で測定した. 実験犬は, EVLWが200~300%増加するまで(maximal edema), PEEP=0cmH2O(zero end-expiratory pressure, 以下ZEEP群)で換気し, その後2群に分け6頭はZEEPのままで, 残りの6頭はPEEP=10cmH2O(以下PEEP群)で換気した. その結果, ZEEP群では3時間以内に全例死亡したのに対し, PEEP群では4時間にわたり6頭全て生存した. EVLWは, ZEEP群ではmaximal edemaからやや増加傾向を示したのに対し, PEEP群は有意な変化は認められなかった. PaO2は, ZEEP群では低下傾向であったが, PEEP群では4時間を通じ有意に増加した. これらのことより, PEEPは重度の実験的肺水腫犬に対しても肺機能を改善するが, これらの効果はEVLWの減少によるものではないということが明らかになった.

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