Journal of Veterinary Medical Science
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マウス肝炎ウイルス感染マウス内で増加しているT細胞の性状
久和 茂町井 研士奥村 敦豊田 裕
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1996 年 58 巻 5 号 p. 431-437

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抄録

マウス肝炎ウイルスJHM株(JHMV)はC57BL/6マウスの脾臓で数日間増殖したが, 1週間以内に排除された. ウイルス排除に伴って, 脾臓内でCD8+T細胞数は3倍に, CD4+T細胞数も2倍に増加した. 一方, CD8+T細胞を除去したマウスではウイルスの排除は緩慢であり, 両方のT細胞を除去したマウスではウイルスは全く排除されなかった. フローサイトメトリーによる解析から, JHMV感染により脾臓T細胞の細胞表面抗原の発現が変化することがわかった. すなわち, JHMV感染マウス脾臓で増加しているCD8+T細胞においてCD11a, CD43, CD44, CD49dの発現量は増加していたが, T細胞レセプター, CD8, CD45RB, L-セレクチンの発現量は低下していた. CD11b, CD25あるいはNK1.1を発現しているCD8+T細胞は認められなかった. また, それらのT細胞レセプターβ鎖は不均一であった. CD11ahighCD8+T細胞に加えて, CD11ahighCD4+T細胞も感染後一過性に認められた. ウイルス特異的細胞傷害活性は感染7日後のCD4+T細胞およびCD8+T細胞に認められた. 脾臓におけるウイルスの排除およびウイルス特異的細胞傷害活性とCD11ahighT細胞の出現が時間的に相関していることから, JHMV感染におけるウイルス排除機構にCD11a<high>T細胞が働いていることが示唆された.

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