1996 年 58 巻 9 号 p. 845-848
キンカチョウの自然感染例から分離されたSalmonella Typhimurium(S.Typhimurium)の感染性を調べるため, キンカチョウを用いて接種試験を行った. 1羽当たり102CFU, 104CFUもしくは105CFUのS.Typhimuriumを, それぞれ8羽のキンカチョウのそ嚢内に接種し1週間観察した. その結果, 105CFU接種区において全羽のキンカチョウに感染が成立し, 7羽の肝臓に巣状壊死が認められた. 次に105CFUのS.Typhimuriumを8羽のキンカチョウに接種し22日間観察したところ, 19日目に1羽が死亡し, 糞便中への排菌は接種翌日から最終日まで認められ, 最大排菌量は4×103CFU/gであった. 接種22日後における肝臓, 脾臓, 腸管の保菌は死亡鳥も含め2羽のキンカチョウに認められ, 肝臓の巣状壊死は6羽に認められた. 以上の成績は, キンカチョウ由来S.Typhimuriumがキンカチョウに対し病原性と感染持続性を有することを示唆し, このことからキンカチョウにおけるS.Typhimurium感染症はヒトへの感染源として重要と考えられた.