歩行者事故における下肢傷害では膝靭帯などの軟部組織の傷害発生割合は比較的少なく,致命的な傷害ではないが,回復に時間を要することや再建手術が必要となる場合もあることから,歩行者事故において考慮すべき重要な傷害部位といえる.本研究では,膝靭帯の損傷について検討をおこなうことを目的として,医療用断層画像を用いた膝靭帯有限要素モデルを作成し,シミュレーションにて強制的に膝部に曲げを作用させ,膝靭帯の損傷形態について基礎的な検討をおこなった.膝に強制的な曲げを生じさせた場合,人体外側からの衝撃に対しては外側側副靭帯,前十字靭帯に損傷が生じ,人体内側,および後方からの衝撃に対しては内側側副靭帯,後十字靭帯の損傷がみられた.損傷箇所としては,十字靭帯が大腿骨結合部であり,側副靭帯では靭帯の中央付近での損傷が見られることがわかった.