西日本畜産学会報
Online ISSN : 1884-6394
Print ISSN : 0914-3459
ISSN-L : 0914-3459
自然草地におけるトカラ馬および黒毛和種繁殖牛の採食行動特性
中西 良孝稲葉 友香原口 裕幸内村 利美紙屋 茂柳田 宏一萬田 正治
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 40 巻 p. 16-25

詳細
抄録
異種家畜による生態的な草地管理技術の確立と日本在来馬であるトカラ馬の積極的な役利用を図るための基礎的知見を得ることを目的として, 放牧圧がほぼ等しくなるよう黒毛和種妊娠牛4頭群とトカラ馬8頭群を別々に放牧した自然草地 (それぞれ, 牛区および馬区各々約1ha) において, 放牧期間中の3時期 (初, 中および後期) にそれぞれの日中 (7: 00~19: 00) の採食行動を観察するとともに, 退牧後に採食植物の草高および現存草量を測定し, 両者間で比較検討した。
牛の採食行動の日内変化については, 放牧初期および中期に4つの採食ピークが認められたが, 後期では10: 00~11: 00を除き, 分散していた。一方, 馬ではいずれの時期においても概ね3峰性のパターンを示したが, 牛ほど明瞭ではなかった。放牧期間中に両家畜が共通して採食した植物は10科19種であった。採食植物の種数はいずれの時期においても畜種間で大差が見られなかったものの, 低頻度で採食された植物の種類は畜種間で異なった。両家畜ともススキ (Misccznthus sinensis Anderss.) とチカラシバ (Pennisetum alopecuroides L.Spreng.) を多く採食したが, チカラシバについては放牧初期および後期で牛よりも馬が有意に多く採食した (P<0.05) 。また, 入牧前のススキとチカラシバの草高および現存草量に牛区と馬区で差は認められなかったが, 退牧後には牛区と比べ馬区で有意に低い値を示したこと, ならびに馬はチカラシバを地際まで採食したことから, 牛と馬との植物部位に採食高 (特に, 垂直方向) の違いが明らかとなった。
著者関連情報
© 日本暖地畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top