1990年代以降、「生態系サービスへの支払い」(Payment for Environmental Services: PES)の考え方に基づいて各種の生態系サービスを維持・保全するための制度ないし仕組みが、世界各地で導入されるようになってきた。本論文では、日本のPES類似制度として、「あいち森と緑づくり税」と「豊川水源基金」、「矢作川水源基金」を取り上げ、その概要とPESに含まれる三要素((1)費用負担、(2)補償、(3)事業)を用いて、費用負担と補償の適合性および事業の効果を分析した。その結果、「あいち森と緑づくり税」は、生態系サービスに対して新たな財源を徴収した取り組み自体がPES類似の制度と見なすことができた。また、二つの基金は生態系サービス全体を対象としていないが、限定した生態系サービス(水源涵養機能)に対する支払いであり、PES類似の制度と言えた。