ウォーターフロント開発は都市再開発の中心的プロジェクトとして位置づけられてきている。確かに今日の開発形態はかつての臨海コンビナート開発とは異なり,商業施設や住宅・オフィスといった脱工業的開発が中心である。しかし,開発手法という点では大きな変化は見られないのではなかろうか。いま必要なことは,市民的観点から現在のウォーターフロント開発の抱える問題点を明らかにしてゆくことである。その中心は,やはり,埋立問題であろう。本論文は沿岸域会計という新しい分析概念を提唱し,それに基づいて大阪市・南港事業および神戸市・ポートアイランド事業を財政的側面に焦点をあて,分析した。結論として,都市自治体の開発利益の内実は制度的要因によるものであり,総合的に見たとき,埋立は経済的にいっても問題が大きいといえる。